ミクロアース物語0.100の文章について

 ミクロアース物語0.100は、M161シェリフを中心にミクロマンコマンド2号が古代世界でどのように活動していたのかという謎を解き明かそうとした創作です。ミクロマンコマンドが古代の地球にいたことは間違いないのですが、その時どんなことをしていたのかはミクロマンファンの自由な解釈に委ねられています。しかしカタログでもヒントとなるような記述があまりにも乏しいため、そのような考察は今まで殆どありませんでした。ミクロマンコマンドが現代に甦ったことで何かの証言が得られてもいいはずですが、それもありません。
 一方、古代エジプトについての考古学的な研究には大きな進展がありました。ツタンカーメンのミイラのCTスキャンによる詳しい調査やDNA鑑定により王族の血縁関係を推定したことなどがエジプト考古学局のザヒ・ハワス博士により発表されました。その内容はかなりセンセーショナルに報道されましたが、もっと冷静に受け取るべきだとする近著も出版されています。私の立場は以下の通りです。

・近親婚で生まれたために虚弱であったという最近の説は支持しない。絵画に描かれたような活発な若者であったという従来のツタンカーメン像を重視すべきだと考える。足指が一部欠損していたことも、発掘後にミイラが粗末に扱われていたためであることが告白され、最近の説には誤解が含まれていると思われる。

・死の数か月前にチャリオット(二輪戦車)に乗っていた時の事故で重傷を負っていたという推定は受け入れる。何者かに後頭部を鈍器で殴られて数か月後に死亡したという撲殺説は不自然すぎる。

・マラリアに感染していたという証拠はあるが、抵抗力を持っているのが普通であり、死因としてマラリアは重要ではない。

・KV55号のミイラはアクエンアテンであり、ツタンカーメンの父にあたるというDNA鑑定結果を支持する。若い男性のミイラと推定され、スメンクカラーではないかという説があるが、相応に老化しているという証拠も見つかっている。

・ミイラの見つかっていないスメンクカラーは、アクエンアテンの正妃ネフェルトイティが短期間だけ王として即位したときの名前であるという説を支持する。

・アクエンアテンの宗教改革で始まった唯一神アテン信仰は、アクエンアテンの死去後に衰退するが王族によって保たれ、第18王朝滅亡後もユダヤ民族の間に受け継がれてユダヤ教、イスラム教、キリスト教の基となり、世界に広まっていったというフロイトらの説の主要部分を受容する。初期の重要な宗旨であった平和主義が変容することになるのは残念である。奴隷状態にあったユダヤ民族をモーセがエジプトから連れ出してパレスチナに移住したという出エジプト記に記載された物語は、実際の歴史とは別に成立したものと考えられるが、完全な創作ではなくいくつかの言い伝えや真実に基づいているという見方については賛成する。

・出エジプト時のファラオは誰かという問題については諸説あるが、ミクロアース物語0.100が歴史上の事実であったとした場合、セティ1世(在位前1294頃-1279頃)の治世にあたる。セティ1世はアマルナ文化を一掃し、軍事的にも国力を回復させるのに成功したファラオとして知られる。聖書ではモーセが0歳、40歳、80歳、120歳の時に重要な出来事が記載されている。モーセはツタンカーメン(在位紀元前1336-前1327、または前1332-前1322)の下で40歳まで仕えてミディアンの地へ逃れたとすると、80歳でエジプトに戻ってユダヤ民族の指導者となったのは紀元前1287年または前1282年頃という計算になり、セティ1世時代の後期となる。年代にずれがあったとすると、次のラムセス2世(在位紀元前1290-前1224、または前1279-前1212)の治世初期だった可能性もあり、巷ではその方が有力な説となっている。


 ミクロマンコマンドが古代の地球に甦って再び眠りにつくまでどのように過ごしていたのかという疑問について、次のような仮説を提唱します。個別に検証することは困難ですが、全体として矛盾なく物語が成り立つことを以って証明としたいと思います。

・ミクロマンの水晶体が人間的進化をして甦ると、人間の子どもとして産まれてくる。成長した姿で甦ってもよかったのだが、より人間らしいあり方として胎児から成長することがあってもいいだろうと考えた。

・エジプト側サハラ砂漠の一地域で採取することができるシリカガラス(天然のガラス)は隕石衝突によって誕生したという説が有力であるが、ミクロマンコマンド2号や古代アクロイヤーを含む複数の水晶体がそこに落下していたと考えられる。このシリカガラスは、ツタンカーメンの副葬品である有翼スカラベ付き胸飾りの材料となっている。

・ツタンカーメンの棺の下からM161シェリフが甦ったのは、ツタンカーメン自身がシェリフだったからである。当初はツタンカーメンの従者のようなものとして物語を構想していたが、「人間的進化」の実例を示せたら面白いのではないかと考え、この設定とした。シェリフのボディが青いのは、ツタンカーメンの副葬品であるラピスラズリの深い青や、棺に手向けられていたヤグルマギクの青紫色を反映したものである。

・M162サンダー=クフ王、M163スミス=メンカウラー王、M164サミー=カフラー王

・M160エジプトン=モーセ。聖書の「出エジプト記」や映画「十戒」でモーセが見せた様々な奇跡は、エジプトンの超能力によるものである。

・M166サラム=ヨシュア?

・人間として甦ったミクロマンは、ミクロアース爆発前の記憶を断片的に保持している。思い出せないこともあるかもしれないが、ミクロアースの文化を生かしていける可能性があってほしい。

・人間的進化をして甦ったミクロマンも、機械的進化をして甦ったミクロマンと同じように超能力を持っている。

・ミクロマンコマンド2号のうち、M165ステルスだけは機械的進化をして甦った。第4王朝から第18王朝までずっと同じ姿で、非常に長い寿命を持っているかのような発言があるが、実はタイムトラベラーである。このまま現代にも登場する。

・人間として甦ったミクロマンは、αHの力を借りてもう一度眠りに就くことができる。

・古代にもアクロイヤーがいた。αHを持った水晶体と悪意があればアクロイヤーは生まれる。

・ギザの3大ピラミッドには異次元との接続を絶つ役割がある。

・古代世界でヒッタイトだけが有していた製鉄技術は、軍事的摩擦を生じさせるためにアクロイヤーがもたらしたものである。

・エジプトや周辺国をしばしば襲った疫病は、アクロイヤーが変異増殖散布した病原ウイルスの流行によるものである。


 古代エジプトの登場人物の呼称については、以下のものを採用しました。

・ツタンカーメン(Tutankhamen)は、誰かがアルファベットをそのまま発音し、1965年に東京国立博物館で開催されたツタンカーメン展の影響で定着した名前がミクロマンコマンドのカタログでも使われているのでこれを採用した。しかし原語の発音に近いのはトゥトアンクアメン/トゥトアンクアムンである。これは単語単位に分割すると、トゥト「類似、似姿、像」、アンク「生きる、生命」、アメン「アメン神、アムン神」となる。すなわち「アメン神の生きる似姿」といった意味を持つ名前であるが、ツタンカーメンではその意味が通じにくい。

・ツタンクアテン(Tutankhaten)は「アテン神の生きる似姿」という意味を持つ。トゥトアンクアテンと発音した方が原語に近いが、ツタンカーメンとのつながりを重視してツタンクアテンとした。

・ネフェルトイティ(Nefertiti)は「美しい者が訪れた」という意味を持つ。日本ではネフェルティティと書かれることが多いが、 -iTiで一つの語とみなし、ネフェル・ト・イティとした。

・アンケセンパアテン(Ankhesenpaaten)は、アンケセパーテンと呼ばれることもある。アテン神に帰依していることが通じやすいよう、こちらを採用した。

・アンケセナーメン(Ankhesenamen)はアンケセンパアテンが、ツタンカーメンに倣ってアメン信仰に改宗した名前であり、通常この呼び方をされることが多い。原語に近いのはアンケセンアメンであろうが、トゥタンクアメンをツタンカーメンと呼ぶのに合わせてアンケセナーメンをこのまま採用した。

・アクエンアテン(Akhenaten)は、イクナートンと呼ばれることもあるが、多数派であるアクエンアテンの方を採用した。

・モーセ(Moses)は、モーゼと呼ばれることもあり、映画「十戒」の中では英語でモーゼスと発音されているが、字幕はモーゼであった。


 ミクロアース物語0.100の着想は、ちょうど10年前の平成17年にアクエンアテンのアマルナ改革を知ったことから始まりました。その家族愛、平和主義、写実性を重視した美術文化などは発掘者を大変魅了したそうですが、私も強く憧れました。結果的に国力が低下したことで改革に批判的な意見もありますが、これが成功していたらどんなに素晴らしいことかと思うと残念でなりません。その時の唯一神信仰が今日の世界宗教につながっているのではないかという見方は、残念な気持ちに少しの慰めとなるかもしれません。さらに、ミクロマンコマンドが加担したとすることで溜飲を下げさせてもらいました。
 10年前にはツタンカーメンの父がアクエンアテンだという説は有力ではありませんでしたが、遺伝子調査の結果かなり現実的となったものの、今なお決着していません。また10年前はアクエンアテンとその子ども達は遺伝病であるマルファン症候群を患っていたという説が濃厚で、当初はその線でミクロアース物語の筋書きを作っていたこともありますが、今ではほぼ否定されています。このように最新の調査結果に翻弄されながらひとまず完成した物語ですが、まだまだ謎が残っています。
・アクエンアテンはどのようにして死去したのか。
・ツタンカーメンの死去後にアンケセナーメンがヒッタイトに手紙を送り、夫としてヒッタイトの王子を迎えようとしたところ、王子は何者かによって殺害された。犯人は誰か。
・モーセの墓はどこにあるのか。
今後の調査で答えが出る可能性のある謎です。その時は新たにミクロアース物語の続きが書けるかもしれません。
 また、私には手がけられませんでしたが、大ピラミッド建設時のエピソードや、ミクロマンコマンド2号以外の古代ミクロマンの活躍など、まだまだミクロマンファンの空想力を掻き立てる素材はたくさんあります。様々なアプローチから謎解きに挑戦する人の登場を期待しています。


参考文献
『ツタンカーメン 死後の奇妙な物語』 ジョー・マーチャント著、木村博江訳、文藝春秋、2014年
『ツタンカーメン』 大城道則著、中公新書、2013年
『一神教vs多神教』 著者 岸田秀、聞き手 三浦雅士、朝日文庫、2013年
『古代エジプト文明 世界史の源流』 大城道則著、講談社、2012年
『ツタンカーメンと出エジプトの謎 隠されたパピルスの秘密』 アンドルー・コリンズ/クリス・オージルヴィー=ヘラルド著、伊藤はるみ訳、原書房、2004年
『誰がツタンカーメンを殺したか』 ボブ・ブライアー著、東眞理子訳、原書房、1999年


ミクロアース物語0.100の画像について

 大ピラミッドの写真及びアテン信仰の画像は、Wikipediaから入手しました。二次使用ガイドラインに則り、参照URLを明記しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89#/media/File:All_Gizah_Pyramids.jpg
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%B3#/media/File:Aten_disk.jpg
 象形文字風線画は、ミクロマンコマンド2号のカプセルに描かれているものです。アクロイヤーや太陽円盤が描かれ、戦闘のシーンの関連画像として使用することができるのではないかと思います。この線画は様々な解釈が可能で、ジャイアントアクロイヤーの出現やロボットマシーンZの登場を予期しているという説があります。これをミクロアース物語0.100に用いると、古代アクロイヤーとの戦闘を描いていると解釈することになります。
 キューブリフレクターの画像は、他サイトのものを使わせてもらいました。
http://polyhedra.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-447c.html
 ツタンカーメンの黄金のマスクの画像は、浪曼堂版ミクロマンコマンド2号ゴールドカプセルを使用しました。浪曼堂の広告情報によれば青で墨入れすることで、本物のツタンカーメンのマスクのようにラピスラズリ装飾が再現できます。今回はシェリフの青いカプセルの画像を合成してそれらしい画像にしました。


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