ミクロアース物語 1.00+0.02

コンタクト

 少年Tは今度は鉱石ラジオ作りに挑戦した。学校の先生が作り方を教えてくれたのだが、これまでの工作のノウハウが生かせそうだったのでやる気になったのだ。電磁石作りで使ったエナメル線をフィルムケースに巻いてコイルを作り、空き缶を10cm角に切り開いたもの2枚に画用紙を挟んでバリコンを作った。レシーバーはテレビのイヤホンでいい。ダイオードが必要だが、友達が粗大ゴミの中に見つけたラジカセから、それらしい部品を引っこ抜いて組み立てたら、成功した。電池もないのに、空中の電波のエネルギーだけでラジオが鳴るということに感心した。しかしラジオを作る部品を手に入れるために別のラジオを壊すなんて、ナンセンスだ。どうせならトコトン手作りにこだわりたい。
 検波素子としてはゲルマニウムダイオードを使うのが一般的だが、昔は鉱石に針を立てて作っていた。要するに、半導体なら何でもいいのだ。半導体に使われる物質は、高度な技術で精製したものでなければならないと考えられがちだが、実際には焼け焦げた銅などといった、ありふれたものが半導体になることがよくある。ただし、電気部品として使うためにはそれが単一の結晶でなくてはいけない。地中のマグマや熱水が冷えてできた岩の中には、半導体材料としてつかえそうな鉱物の結晶が含まれていることが多い。川原の石を手当たり次第に試せば、本当の鉱石ラジオを完成させられるに違いない。
 自転車から降りて、少年は石の川原を歩いた。この川の上流では昔、金が掘られていた。鉱山から流れ出た砂金が、岸の草の根に絡みついた土から今でも稀に見つかることがある。ラジオに使えるような鉱石くらい、流れ下ってきている可能性は十分にある。
 30分ほど上流に向かって歩くうちに、暗緑色や黒鉄色の鉱物を含む石を幾つも拾うことができた。大づかみで見ると灰色のつまらない石だが、無色透明の部分や黒光りする部分があったりして意外と美しいことに気がついた。光を当てる角度によっては、暗緑色の部分は金色に見えたり、黒い所は銀色に見えたりする。彼には、そんなミクロの世界が夢のように思えた。
 もう帰ろうとした頃、水たまりで変わった鉱石のかけらを拾った。それは水晶のように角ばった形をしていたが、透明ではなく光沢のある黒鉛のような表面だった。それでいて、太陽にかざすと地面に虹色の屈折光を映し出した。手に持った感じでは、小さいながらも鉄のようにずっしりとしていた。

 家に帰ってラジオに鉱石を組み込んだ。レシーバーを耳にはめ、2本の針金の先を方鉛鉱と呼ばれる鉱石の色んな部分に突き立てて放送が聞こえる箇所を探った。途切れ途切れに音楽と声が聞こえた。不安定ながらも成功である。しかし残念なことに2つの局が混信して聞こえていた。少年はふと思いついて、水たまりで拾った不思議な石を使ってみた。のっぺらぼうの表面は、どこに針を突き立ててもよかった。適当に針金を押し当てて、バリコンを再度調節した。手元が狂って、バリコンの結線が切れてしまった。そのとき、何か声が聞こえた。バリコンの電気容量が著しく低下しているのに、同調したというのも不思議なことだ。仮に電気容量が10万分の1に低下したとすると、受信する電波の周波数は316倍になる。さっきまで地元の1107kHzの電波を受信していたのだから、今は352.4MHzにもなる。そんな計算をしたわけではないが、これはAMラジオの電波ではないことぐらいはわかった。そう思ってよく聞くと、声はレシーバーからのものではなく、頭の中に直接響いてくるようにも感じる。この感触は幼いときに味わった、不安でかつ心地よい浮遊感?「ミク…ロマ……」と何だか懐かしい声。君は誰?頭の中の声に問いかける。「アロ……カイ?…マッ……」返事があった。しかし急に同調が崩れて、それ以上声は聞こえなくなった。鉱石を見ると、それは普通の石英に変わっていた。

 翌日、もう一度川原へ行って、例の不思議な石を探そうとした。上流に向かって歩き続けて、廃坑の入り口を見つけた。通信機のような機械が置いてあった。誰もいないように見えたが、そこは何とアクロイヤーの基地だったのだ。機械の前面には大きな水晶がはめ込まれていた。それを手に取ったとき、アクロイヤーが突然姿を現し、鋭い爪を振りかざして飛びかかってきた。アクロイヤーは異次元に棲息していたのだ。初めはコウモリか何かかと思って水晶で払いのけた。しかしそいつがツノから発射した光線で、そばにあった機械が爆発したのには度肝を抜かれた。少年には何が何だかわからなかったが、機械が壊れたことに相手が気を取られている隙に逃げて、坑口までは何とかたどり着いた。その後をアクロイヤーが追ってくる。
 坑口から出るや、アクロイヤーは巨大化した。無我夢中で走る少年を、アクロイヤーの巨大な影が覆った。不意に口から出た「ミクロマン!」の叫び声。その時、手の中の水晶が黄色く、そして紫色に光って粉々に砕けた。その直後、空のかなたから3つの飛行物体が飛来したのだった。
 テレパシーでそれは少年の味方だということがすぐわかった。昨日頭の中に聞こえた感触がもっとはっきりした強さで現れている。初めてテレパシーを使うときは共振装置を利用する必要があったが、共鳴点をつかんだ今は、神経細胞内の電気パルスを自ら調整し、ミクロマンと意識を共鳴させることができた。

 3つの戦闘機コスモガンダー、マグマガンダー、アースガンダーからミクロロボットが分離すると、3機は合体して大型戦闘ロボット「ミクロガンダー3」になった。アクロイヤーが今しも振り下ろそうとしている腕を、ミクロガンダー3のコスモパンチが受け止めた。すかさずマグマミサイル発射。命中するかに見えたとき、アクロイヤーの姿は元のサイズに縮小し、ミサイルは目標を見失って自爆した。ミクロマン・カムイが、小さくなったアクロイヤーをガンダーマシンで追いかける。地上に降り立ったミクロマン・キルクが、少年に声をかける。
「もう大丈夫。僕たちはミクロマン。アクロイヤーから地球を守るために、君のテレパシーをたどって宇宙からやって来たんだ。」
「あれがアクロイヤー?助けてくれてありがとう。」
 もう一人のミクロマン・クレオは、3体のミクロロボットを率いて廃坑に突入していく。廃坑からは新たに2体のアクロダーマが出現し、ミクロマン達と銃撃戦を始めた。
 カムイに追われていたアクロイヤーは、空中で慣性の法則に逆らって不自然に進路を変えた。不意をつかれたカムイのガンダーマシンは背後を取られてしまった。
「あぶない、カムイ!」
ビビビビビ‥‥
それは仲間の援護射撃だった。ケンジとコロナが銃でアクロイヤーを追い払うことに成功した。アロム、イリア、ウイリ、エイジ、オルガも集まってきた。10人のミクロマンがこれで勢ぞろいだ。
「今だ、アースミサイル発射!アクロイヤーの基地を叩きつぶせ」
形勢はミクロマンに有利になった。アクロイヤーは基地の中へと逃げ込んでいく。
「異次元発生装置を使わせるな。」
しかしアロムの叫びもわずかに遅かった。廃坑の奥にまるで銀河のような無数の星が現れて、アクロイヤーを受け入れると、異次元空間は閉じられ、廃坑は土砂で埋め尽くされた姿に戻った。

 ミクロマンたちは、彼らが地球に来るまでのいきさつを少年に語りはじめた。


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